磯谷 陽子/いそがい ようこ
視覚障がい者ファッションサポーター
1975年/千葉生まれ/かに座/B型
東京都在住
夫と娘2人、夫の両親の6人家族
子育てもひと段落した今、こうして昔から好きだったファッションを通して、少しでも人のお役に立てればという思いの元活動ができることに感謝とやりがいを感じている。
そんな私は数年前は普通の主婦だった。
専業主婦であることに誇りを感じながらも、どこか満たされない気持ちに蓋をして生きてきた自分に少しずつ気づき始めていた。
そんな違和感に気づいたときにどうするか…?
私には無理と諦めるのか、私にはできると自分を信じるのか
この選択により人生は大きく変わると思う。
私は後者を選び、その時からリスタートを切った。
リスタートに年齢は関係ない。
自分の気持ちを大切にし、行動を起こした時が『リスタート』
リスタートを切れば得たい未来を手にするきっかけを掴める。
私の屋号『リスタート』にはそんな思いがこめられている。
学生時代の私は客室乗務員になることを夢見ていたものの、就職氷河期の始まりの年で雇用形態が大きく変わったこともあり、あっけなく夢を断念。短大卒業後は一般企業に就職し、管理部門に配属される。これは私のやりたい仕事なのか…と悶々とした日々を過ごしながら4年で結婚により退職。
その後すぐに長女を授かり、流れに身を任せるように専業主婦になり、家族を献身的にサポートする生活が始まる。
そうすることで、自分の存在意義を感じていたどこにでもいる平凡な主婦だった。
結婚後はライフスタイルが一変。
東京郊外の狭いコミュニティーの中で過ごしていると、服は好きだったもののおしゃれをする意味を忘れかけそうになっていた。当時の私は“専業主婦”という肩書きに誇りを持ちながらも、どこか肩身の狭さを感じていたのかもしれない。
10年の専業主婦生活を経て、パートに復帰。
久々に社会との関わりを持てた喜びからか、服好きが再燃。お金に制約を感じながらもプチプラを大量買いし、心が満たされた気分になっていた。
ところが服が増えれば増えるほど、心がザワザワするようななんとも言えない気持ちに苛まれた。服でパンパンのクローゼットを開けては、私は一体何をしているのだろうと自己嫌悪に。
そんな現状をを変えたいと悶々としていた頃、ひょんなことから骨格診断、パーソナルカラー診断の【似合う理論】があることを知る。
これまで【ファッション=センス】と信じて疑わなかった私は、【似合う理論】という未知の概念を知りたい欲求に駆られた。それと同時に、それまでの人生の中で何一つ達成した経験のない自分に対するコンプレックスに目を向けようと思った。自分自身を変えるきっかけが欲しいという漠然とした思いに突き動かされるように、資格取得を決意。
資格を取得したことで服選びの明確な基準を持つことができるようになったのはもちろん、服を厳選して持つことでいい循環が生まれるということに気づくことができたことが、自分にとって思いがけない発見となる。
この気づきが今の活動の原点になっている。
私自信の経験を、私と同じようにオシャレを楽しめなくなってしまった同世代の女性に伝えたい。こんな私でも誰かの役に立てるかもしれないという思いが膨らみ、地元で骨格診断、パーソナルカラー診断イベントに参加するなど、活動をスタートした。
その後、株式会社NATUREにてパーソナルライフスタイリスト®︎として活動の機会に恵まれ、4年間で某有名ブランドや、駅ビルにて骨格診断、パーソナルカラー診断イベントを実施。ショッピング同行や、クローゼット整理、ファッション講座の開催など、たくさんの方をサポートさせていただいた。
一見、順風満帆のようであるが、全てが1からのスタートだったため日々チャレンジで、緊張に押しつぶされそうになることが何度もあった。それでも諦めずに経験を積んでいったことが今日の自分を作ってくれていると感じる。



女性のためのリスタート講座

スタイリストとして活動をする中で、ある当事者の方との出会いで視覚障がい者のファッションの現状を知るようになる。
服の買い方、毎朝のコーディネートの決め方、服の管理法など。
それまで視覚障がい者のファッションについて考えたことはなく、正直、不自由の多さに愕然とした。
私に何ができるのだろう…
視覚障がい者のファッションについてたくさん調べ、文献などをを読み漁っていくと、視覚障がい者のファッションにおいて問題が2種類あることがわかった。
色・柄、サイズ、洗濯表示などの情報を得ることができない客観的な問題と、コーディネートがおかしくないかという迷いや、流行情報を得られないこと、年相応かなどの判断がつきにくいという主観的な問題の2種類が挙げられる。
私は主観的な問題により周囲から浮いてしまわないか不安があり一歩踏み出せないという悩みを解決することで、視覚障がい者が本当の意味でおしゃれを楽しめるようになってほしい、これが私のできることではないかと思うようになった。
一般的に「おしゃれは自由」とか、「ファッションはセンス」とか言われるが、それが視覚障がい者のおしゃれの大きなハードルになるのではと感じた。視覚的情報が得られないことに加え、正解があってないようなものでは自信が持てずに一歩踏み出すことを躊躇わせてしまうのではないか。
だからこそ店員や、身内などに依存する形になることはとても自然なことだと思う。
だけど同時にそれは本意ではないのではと思った。
なぜなら外見は内面を映す鏡であって、自分自身を表現する手段の一つであるから。
それなのに自分の意思を置き去りにして、誰かの意思で選んだ服を着続けていたら心が満たされることはないのではないのではないかと感じた。
また、生きていく上でおしゃれは二の次であるという現状があるということも感じた。
盲学校では生きていく上で必要な知識や技術を教えてくれるが、ファッションについての学びはない。
確かにおしゃれはしなくても生きていけるし、見えていてもおしゃれに興味がない人だってたくさんいる。
ファッションとはなんだろう?と考えた時、私は人生に彩りを与えてくれるものだと思う。
だからこそ見えていても見えなくても誰でも楽しむ自由と権利がある。
ですが、視覚障がい者がおしゃれを楽しみたいと思ったときに視覚に頼る以外の情報が圧倒的に少ないと感じた。
であればファッションを知識として得られるよう形にし、同時に自分自身を客観視できるようになることで服を選ぶ判断基準を他人に委ねるのではなく、自分自身で持つことが大切ではないかと感じた。
それには一時的なサポートではなく、自信を持って主体的に服を選ぶことができるようなるための道筋を立て、そこに向けてサポートをしたい。それこそ視覚障がい者が本当の意味でおしゃれを楽しめるようになることではないかと感じた。
・ファッションを知識として理解を深めること
・自分自身を客観視することができるようになること
その後、視覚障がい者のファッションサポートをさせていただく中で、この二つを手にすれば自信に繋がり、それが後押しとなっておしゃれに挑戦することができるようになる。そうすることで、誰かの物差しではなく、自分自身のなりたいイメージを明確にしそれを形にしていくことができることを確信した。
自分自身でTPOや気分に合わせてコーディネートを組み立てることができるようになってこそ、本当の意味でおしゃれを楽しむということに繋がると思う。
そんな思いを1人でも多くの視覚障がい者に届けることで、彩りある人生を歩んでもらえたら…そんなに喜ばしいことはない、そんな思いの元 私は視覚障がい者ファッションサポーターとして活動をしている。